" 実験にミスがないとすると、理論の基礎を見直さなければなりません。特殊相対論では、エネルギーや運動量と速度を結ぶ関係式に、ローレンツ因子と呼ばれる量が現れます。例えば、質量 m、速度 v の粒子のエネルギーと運動量は、次式で与えられます(光速 c )。

この式で v が c より大きくなるとローレンツ因子が虚数になってしまいますが、質量 m
が虚数ならば、エネルギーや運動量は実数となり、表だった矛盾は生じません。質量が虚数で光より速く動く粒子はタキオンと呼ばれ、時間を遡って過去に介入
できる(タイムマシンを作れる?)可能性があるため、SF愛好家御用達となっています。ただし、タキオンの存在は、現在の素粒子論の基礎になる量子場理論
で深刻な問題を引き起こします。質量が m である通常の素粒子の量子場は、

という形で振動しますが、m
が虚数だと場が指数関数的に変動してしまうからです。量子場理論では、素粒子は場が安定な状態(=真空)の付近で振動することによって生じると考えられて
いますが、こうした指数関数的な変動は場が安定状態にないことを意味しており、最終的には、タキオンが存在しない新しい真空状態へと遷移することになりま
す。したがって、今回の OPERA
実験の結果が正しく、超光速のタキオンがニュートリノとして実在するとなると、量子場理論も書き換えなければなりません。これは、30年以上にわたって多
大な成功を収めてきた素粒子の標準模型を全面的に見直すことを意味します。特殊相対論の訂正に留まらず、理論物理学の根幹にかかわる事態となります。
このように理論物理学への影響があまりにも大きいため、今回の実験に関してはまず追試を行って正当性を検証すべきだというのが一般的な見方でしょう。一
部の物理学者は、超光速で運動する素粒子の理論--例えば、時空には隠れた次元があって、その次元での情報の伝播によって光より速く動ける--を模索する
かもしれませんが、大半の物理学者は、複数の実験で同じ結果が出るまで様子見するものと思われます。"
—質問集 (via raurublock)